2019年をふりかえる(本と演劇編)

書くぞ書くぞと思ってたのに気づいたらおおみそかだったので、あわてて高円寺のプロントで書きました。なぜ高円寺にいるのかというと、お世話になった書店員さんが今日で退職、書店員自体を辞められるということだったので挨拶に来たんだけど、年末年始に人がいなさすぎて連勤ののち、年明けの7日が最終出勤日になったとか。人が足りていなくて最後まで大変そう。そういう現実をふまえたうえで、本とか演劇とかがあることに感謝したいので、読んで/観てよかったものをふりかえります。(映画とかお笑いとかもまとめて書きたかったけど時間かかりすぎたので中断)

 

【本】(ブクログに記録)

80冊読んだ。世間の平均からしたら多いかもしれないけど、本にかかわる仕事をしていることを考えると少ない。だから恥ずかしいんだけど、さらすことで一歩を踏み出したい。(何の)

 

リストを見ると、やっぱりフェミニズム・結婚/離婚・家族にまつわるものが多いな~。そのなかでも決定版だったのが、田嶋陽子『愛という名の支配』(新潮社)。「フェミニスト」の代表みたいな人だけど、本人はその言葉にしばられない自由な方だってことが今年のブーム(?)でようやくわかった。フェミニズムってあれをしちゃいけないこれを言っちゃいけないではなく、なんでもやっていいということだし、自分を解放するためにみんなが自分向けにカスタマイズして実践していくものだって、この本を読んで身体にインストールされた気分。そのほか、チョ・ナムジュほか『ヒョンナムオッパへ』(白水社)、田房永子『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』(大和書房)、能町みね子『結婚の奴』(平凡社)が特に心に残りました。『結婚の奴』はある本屋さんの企画で書評を書いたので、年明けに公開してもらえる予定。その本屋さんにやや引かれたのが気になっていますが…。

 

あとは今年出た本じゃないけど、これまた田房永子さんの本で『キレる私をやめたい』(竹書房)を読んだのも大きかった。これがきっかけでスーザン・フォワード『毒になる親』(講談社)を読んだり、ゲシュタルトセラピーを受けたりして、今年のマイトピックスのなかでも一連の出来事は大きかったのですが、長くなるのでいつか別で書こうと思う。

 

フェミニズム関連の本はどんどん増えているし情報も入りやすい一方、男性の側の本ってあまりないな~と思って、詳しそうな友だちに教えてもらったのが森岡正博『感じない男』(筑摩書房)。これがめっちゃおもしろかった。男の人のセクシャリティって、「男はバカな生き物」とか「賢者タイム」だとかって雑にしか語られないけど、この本はちがいます。「自分を棚上げにしない」をモットーにしている学者の森岡さんが、自らの性にまつわるうごめきを客観的に考察していて、絶対に体感できない男性の身体と行動原理を理解するヒントになった。なかでも、男性は性を語るとき、女性のことばかり挙げ自らの心や身体の動きにあまり触れないのはなぜかって話がすっごくおもしろかったし、つらくもあった。女だからという一点のみにおいて向けられてきた、ぶしつけな視線に気づくきっかけにもなった。もっとこういう本を読みたい。

 

そのほか読んでよかったのは、東畑開人『居るのはつらいよ』(医学書院)、末井昭『自殺会議』(朝日出版社)、島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』(新潮社)。コミックだと、光用千春『コスモス』(イースト・プレス)、本田優貴『まだ離婚してないだけ』(白泉社)、ぺス山ポピー『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』(新潮社)などなどなど。うーん、どれもちゃんと感想書きたい。書評や感想を真面目に書くと、自分がその本を読んで何を思ったのかがどんどん明確になってきて、読書が深まるな~と思ったので、来年はもう少しカジュアルに、都度都度やっていきたいものです。が、どうなることやらだな。

 

あと、読もうと思ってたけど来年に持ち越した本もたくさんあって、濱野ちひろ『聖なるズー』(集英社)、綿野恵太『「差別はいけない」とみんないうけれど。』(平凡社)、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)、千葉雅也『デッドライン』(新潮社)などなどなど…タイムラインにはおもしろそうな新刊がどんどん流れてくるんだけど、追いつきませんな。(お金と読むスピードが)

 

【演劇】(手書きでノートに記録)

40本観た。たぶんこれまででいちばん多い。基本ソロ観劇だったのが、友だちと一緒に観に行くようになったうえ、彼女たちとまめに情報交換するようになったのが要因。観たものへの感想がちがったとき、むしろそれをおもしろがれる友だちが出来たのが大きかった。これは演劇のみならず、いろんなものへの心構えに影響があった気がする。そんな友だちに感謝するばかり。

 

例年よりもたくさんの演劇を観たことで、その分おもしろくないものにも出会うようになって、おもしろいというか自分の好きな演劇やよい演劇ってどういうものなのか考えるようになった。昨日、大人計画宮崎吐夢さんが今年観た演劇をふりかえるイベントに行ったら「演出家の意図を20~30%しか理解できないとしてもおもしろいと感じるものが、よい演劇ではないか」というようなことをおっしゃっていて、そうかもな~と思いました。

 

そんなわけで、今年印象に残った演劇を挙げると、まずはウンゲツィーファ『さなぎ』。ウンゲツィーファという劇団は、まず劇場選びがすんばらしい。先月観てきた『動く物』って公演なんか、主宰の本橋龍さんが実際に住んでいる6畳くらいの部屋が会場でした。演者や舞台美術のみならず、そこにいるお客さん含めた空間をまるっと作品にしてしまうような力があって、それってすごいことだなと毎度感じ入ってしまう。『さなぎ』という演目は、東中野の驢馬駱駝(ろまらくだ)というバーが会場だったんだけど、入場した瞬間からすべてがよかったなぁ。人がいま生きているということを濃密に感じられる空間に居合わせられて、とっても幸せだった。って書いても書いても内容に触れられない…演劇の感想を書くのはむずかしいうえ、わたしが好きなのはストーリーがしっかりした舞台よりも、居合わせられてよかったって感じられるものなのかも。

 

お次は、ほりぶん『飛鳥山』。鎌田順也さん(ナカゴー)作の舞台が今年前半に3つあってうれしかったんだけど、なかでも『飛鳥山』はすごかった。今までみた演劇のなかでもたぶんいちばん笑ったし、いちばん疲れた。出ている側の消費カロリーもすさまじかったようで、終了後に挨拶のために出てきた役者さんはみんな風呂上りみたいになってた。内容を思い出そうとがんばってみると、北区王子の飛鳥山にある公園で生き別れになった母娘の話で、不慮の事故(?)でブラジルにワープしてしまった母を呼び戻すために超能力を身につけて…ってダメだあのおもしろさを文章にするのは無理がある…。とにかくあんなに笑えてあっけにとられる舞台はそうないんだけど、幸運にも鎌田さんにインタビューする機会に恵まれ、「そもそも演劇に笑いが必要かどうか。たとえばハイバイの『夫婦』には笑いがないけど心に残る」ってことを語っておられてそれもまた味わい深かった。詳しくは、発売中の『Didion 03』(エランド・プレス)をお買い求めください!(いきなり宣伝)

 

そのほかによかったのは、モダンスイマーズ『ビューティフルワールド』、世田谷パブリックシアターKERA・MAP#009 『キネマと恋人』、庭劇団ペニノ『笑顔の砦』、ゆうめい発表会vol.2『ファン』、快快『ルイ・ルイ』、バストリオ『ストレンジャーたち/野性の日々』などなどなど。あ~どれもすてきな時間を過ごさせてもらったなぁ、感謝です。

 

見逃したのは、夏の日の本谷有希子『本当の旅』、月刊「根本 宗子」『今、出来る、精一杯』、ウティット・ヘーマムーン × 岡田利規 『プラータナー:憑依のポートレート』などなどなど。友だちやタイムラインの評判を聞くころにはチケットが取れない/予定が合わないものも多いですよね。そういう生感、刹那感も含め演劇の特徴だとは思う。

 

は~~~本と演劇書くだけでまあまあな時間を取ってしまった。これから鶏肉を煮たいのでいったんここで切って、そのほかのことも書きたい…が書けるのか? 間に合わなかったら来年書く!