2020年11月25日(水)/手がかりがやってくる日のために

女は映画が安い日なので、午前中に『スパイの妻』を観た。とても上質で、丁寧に作られたものだと言うのが画面全体からびしびしと伝わってくるような。シリアスな内容なのに、お屋敷や家具に調度品、洋服や車など、その一つ一つが美しくて惚れぼれしてしまう。乱雑に書類が積み重なったオフィスでさえ、夢のようにロマンチック。

 

舞台は神戸で、太平洋戦争が始まる前の1940年。作中、いろんな人物の足音が不穏に響いて耳に残る。「戦争の足音」という言葉があるけれど、こうやって一人一人の歩いた道が結果的に戦争に至る道へとつながっていったのかもしれない。

 

蒼井優はいつだってすごいけど、この映画でもやっぱりすごくて、パンフレットの黒澤監督のインタビューを読むと、なおさらすごさがわかる。蒼井優も、高橋一生も、「この役はどうしてこう言う行動をするのか、どうしてこんなセリフを言うのか」を一度も聞いてこなくて、それがいちばんうれしかったそう。高橋一生は、何に出てる時もそう思うんだけど、たとえ笑っていても、緊張感が全身を覆ってるように見えるというか、その神経質そうな感じが、この映画にもすごく合っていた。

 

そしてパンフレットを読みながら、迂闊にも、映画とか演劇のパンフレット用のインタビュー仕事をやってみたいと思ったわけだけど、クレジットが載ってなくて手がかりが掴めなかった。どうやったらできるんだろ。ツテがないときびしそう。どんな仕事でもそうかもしれないけど。

 

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考える系の仕事がはかどらず、というか作業系の仕事の締め切りも迫っていることもあって、作業系の仕事を進めるが、どう言うわけか作業系をしていると「逃げている」ような気分になる。

 

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帰ると、部屋の更新手続きの封筒が。気づけば3回目の更新? これまでたぶん10回くらい引越してきたけど、この部屋が最長。この2年間も、どこかいい場所があれば〜と思いながらまじめに考えるでもなくぼんやりしていたので、結局また更新してしまいそう。

 

思えば、この建物の入り口で引っ越しのトラックを見かけたことがない。一生この部屋に住むことになったりして…とよぎってゾッとしたけど、雨風しのげて、猫が通るベランダもあって、ナイスな屋上もある建物なので、ここの家賃を払い続けられる限り別にそれでもいいかという気もする。や、いいのか?それより何より、収入が安定して、社会的信用を獲得するまでは、どこかに行きたくとも、どこへも行けないわけなんだけど。