2020年11月27日(金)/ゆうめいの新作『祐希』を観た

あくまで自分のなかでということだし、ラジオと舞台と言うちがいはあるけれど、「空気階段の踊り場」と劇団のゆうめいを好きな理由は、すごく似ている。どちらも、いま生きて、変化しつづける人たちのドキュメンタリー。どちらも、情けなさや悲しさを含めて感情をさらけ出しているのになぜかかわいい。

 

もし今年何もなければ、ゆうめいにとって大きな飛躍の年になっていたような気がする。いち観客のくせに、勝手に歯がゆい気持ちになったりもするのだけど、それがたとえ30分の短いものとはいえ年内のうちに新作が観られることをまずは喜びたい。というわけで、久しぶりにテアトロコントに行ってきた。

 

ゆうめいの新作『祐希』は、所属俳優田中祐希さんの実体験を元にした(とされる)私演劇。去年夏にビルの屋上で開催された、ゆうめい発表会『ファン』を観て以降、田中さんの私生活晒し系演劇に心を奪われ、今年3月にこまばアゴラ劇場で上演された『俺』は、作演出の池田さんの実体験をベースにしたものだけど、続いて自粛期間中に田中さんの住む部屋から配信された『俺』田中家ver.は、作品全体を田中色に染める勢いと破壊力を持っていた。

 

そんなわけで、生田中は3月ぶりだったわけだけど、なんというかやっぱり、生命力の強さを感じる…! それは作品の中身にも言えることで、自粛期間中の行きどころのない寂しさやら性欲やらやるせなさが爆発する30分だった。

 

いつもなら、男性の幼稚な(すいません)恋心の話は苦手で、田中さんは演技力が抜群なことも相まって、けっこう普通にキモいと思ってしまう面もある。だけどそのギリギリのところで、気持ち悪さがかわいらしさに転換して、最後は笑いやら感激やらに包まれてしまう。なんなんだ。池田さんや高野ゆらこさんの謎コーラスとか、その辺の演出が絶妙すぎて、もう。さいこうです。

 

作中に、通話アプリの「斉藤さん」で知り合った女の子に名前を呼んでもらいながらホニャララするシーンがあって、キモいにはキモいのだけど、一概にキモいで切り捨てられない気持ちもあり、下の名前を呼ばれてギュンとなる感じはめっちゃわかる。日頃名字で呼ばれ慣れているのもあって、下の名前を不意に呼ばれると焦る。しかし気持ちいい。普段から慣れておきたく、名乗る時は下の名前を伝えたいのだけど恥ずかしくてだいたいできない。だから、知らない女の子から電話越しに「祐希」と呼ばれて発情する田中さんを馬鹿にできない。

 

それにしても、田中さんの恋心が実らないシリーズ(?)、まるで寅さんのようで笑ってしまう。かといって田中さんにずっと不幸でいてほしいとも思わず、空気階段の踊り場で、二人それぞれの結婚を心から祝福できたように、田中さんに幸せが訪れたらそれはやはり、きっとすごくうれしい気持ちになると思う。あと、俳優としても早く売れてほしい。朝ドラにでてほしい。

 

と、こんな調子で、ゆうめいに関しては、観客を超えて、勝手に親戚くらいの気持ちになってしまう。重くてすいません。来年、もろもろがクリアされて、ゆうめいがさらに活躍の場を広げたいくのを見届けられるといいなぁ。