2020年12月13日(日)/『ゲンロン戦記』めっちゃおもしろい

読み始めた『ゲンロン戦記』がとてもおもしろい! 知り合い数人がTLで話題に挙げていたのがきっかけ。

 

若くして論壇デビューし、哲学者としての地位を得たのにもかかわらず、「エリート」の枠に閉じこもらずに世俗にまみれ、苦労しながら会社を経営しているのは、そもそも祖父が商売人だったのを見て育ったから、っていうのがとても興味深い。

 

とても頭の良い人だろうに、わざわざ人間くさい方向に向かっていくのは、そういう生育環境が影響しているのかもしれないけど、逆に、商売人の祖父を持ち、サラリーマンと主婦の家庭に生まれた東さんは、どうして哲学者になろうと思ったんだろう。そっちも気になってくる。

 

いろんな人を信じては裏切られ、そのたびに信じた自分が悪いと後悔する。だけどその「誤配」によってもたらされた事柄を受け入れて進む様子に、人間の成熟というものを知らされる思い。

 

半分くらい読んで、今のところいちばんよかったというか、グッときたというか、もはやちょっと笑っちゃったのは、「人間はやはり地道に生きねばならん」と意識改革したという箇所です。

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会社の創業記もの、とりわけ出版社や本屋の創業の話が好き。ゲンロンは出版オンリーの会社ではないけど、何かを発信したり場を作ったりしようとする、そこに思い至る思考の過程がまず興味深い。

 

メディアとして存続すること自体が目的のようなメディアはきっと少なくない。だけど、出版にせよ、ウェブにせよ、イベントにせよ、「自分の理想とする社会」みたいなものが根底にあって、そこに向けた活動であって欲しい。そういうのってこじつければなんとでも言えるんだけど、自分個人としては、そこには誰かが生きてきて感じたことが発端としてあって欲しい。

 

たぶん自分はそんなふうに、メディアに対して夢を持ちがちで、だからこそ東さんが何度もお金のことで苦労していることをさらけ出してくれることで、現実を教えてくれる。成し遂げたい理想の社会も、金も、どっちも大事だもの。お金、お金。最近そんなことを考えがち。